【特定社労士の筆者が解説】仕事を辞めた後どうすればいい?就活よりも先に必要な手続きまとめ

仕事を辞めた後、次の就職が決まっている人以外は、就活や失業保険の手続きのために、ハローワークに行く人が多いと思います。

しかし、もっと大切なことがあります。

健康保険や国民年金の事を忘れてはいませんか?

そこで今回は、退職の後まっ先に行うべき行政手続きと、その手続きで知っておいた方が良い知識を、数年前まで特定社労士事務所の個人事業主だった筆者が紹介します。

 

1.仕事を辞めると健康保険の資格を失う事に危機感を持て!

(1)健康保険が使えなくなる?

会社に所属しているときは、会社が所属している健康保険組合か「協会けんぽ(全国健康保険協会の略称)の健康保険証を、あなたとあなたの扶養家族は持っています。

そして、会社が、あなたとあなたの被扶養者の健康保険料の2分の1以上を負担してくれています。

健康保険は、協会けんぽ管掌か組合管掌健保のどちらかのはずです。

協会けんぽは、法律で定められた保険料率、会社の保険料負担割合も法律で定められた2分の1です。

しかし、組合管掌健保の場合は、保険料率も会社の保険料負担率も、その他の手当等も、法定で定められたものよりも優遇された独自の規約で運営されています。

そのため、給料から控除される保険料が安かったり、被扶養者も含めて利用できる健康診断や福利厚生等があります。

会社を辞めた日の翌日にそれらの資格を失うことになります。

(2)仕事を辞めたら国民健康保険加入手続きを

会社を辞めた翌日には、会社の健康保険が使用できなくなります。

その前に辞めた日に健康保険証を扶養家族分も含めて全て会社に返却してしまっています。

つまり、もし病気になったときは、病院に行ったら自費診療になってしまうのです。

あなたの扶養に入っていない同居の家族がいる場合は、健康保険は、あなた以外の家族の扶養に入れてもらうのがお得です。

例えば、共働き家庭で、妻がフル勤務で働いて夫の扶養に入っていない場合は、今まであなたの扶養に入っていた子供や親や同居の兄弟姉妹を、妻の扶養家族にしてもらいましょう。

あなたが会社を辞めて、5日以内に会社に申請して手続きをしてもらえば、あなたが会社を辞めた翌日から遡って、あなたの扶養家族だった人たち全員が妻の扶養か家族になります。

健康保険被扶養者証が届くまでには1ヶ月くらいかかりますが、その期間は自費の場合だったり、仮の健康被保険者証があったり、妻の会社の健康保険の管掌がどこであるかによって異なりますので、会社に問い合わせましょう。

前もって、扶養者届けについて妻の会社に問い合わせておくと良いでしょう。

とにかく会社を辞めた翌日には、市役所や区役所に行って国民保険の手続きを行いましょう。

 

2.あなただけ国民健康保険の手続きをすべし!

(1)共働きなら転職するまで妻の扶養に入ることもアリ?ナシ?

あなたが失業保険をもらうつもりでも、自主退職の場合は3ヶ月の待機期間があります。

そのため、3ヶ月だけでも妻の扶養に入れてもらいたいものです。

妻が企業の厚生年金加入者で国民年金2号被保険者ならば、その配偶者である夫だって、要件を満たせば国民年金の3号被保険者になれるのです。

さて、その要件とは以下の通りです。

  • 国民年金2号被保険者の配偶者である
  • 年間所得(年間見込み所得含む)が130万円未満である
  • 20歳以上60歳未満であること

この3つの用件を全て満たせば、男性だって国民年金の3号被保険者なのです。

3号被保険者の特権は、国民年金の保険料を払わなくても、国民年金1号保険料を配偶者の会社が負担してくれているので、国民年金の保険料を払ったの被保険者期間にカウントされることです。

国民保険料の1ヶ月16900円を支払わなくてもいいので、お得感が大きいですよね。

(2)転職を考えているなら夫が妻の扶養に入るのはまず無理!

しかし、ここで問題が発生します。

会社を辞めたら、当然ハローワークの失業保険をもらうために失業認定の手続きを行いますよね。

失業とは、働く意思があることが大前提なのです。

例えば、次のような人には、働ける状況になったと証明されるまで、失業の認定が降りないことがあります。

  • 妊娠して出産・子育てのために会社を辞めた人
  • 病気で長期入院のために会社を辞めた人
  • 介護のために会社を辞めた人

これらの人は、働ける状況にないという理由から失業の認定が下りないのです。

だから、失業手当をもらうには、例え3ヶ月の待機中でも、就職活動をした証明をハローワークに提出して、働く意思がある証明を示さなければなりません。

つまり、前職で扶養の範囲(年収約108万円未満)でなかった人が、働く意思があって就活を行っている以上、見込み収入が130万円未満とみなされることは、まず無いと言って良いでしょう。

つまり、扶養の範囲内に入るには、失業手当をもらわずに、主夫になったり、起業して企業に勤めない意思表示をする必要があります。

だから、転職する意思があって失業保険をもらう予定の人は、国民保険・国民年金の加入手続きをしておく必要があるのです。

 

4.失業保険の待機期間が短縮される場合がある?

(1)退職の理由次第では3ヶ月待機が7日待機になるかも?

失業保険の手続きも、失業保険の申し込み手続きで知っておいた方が良い情報をご紹介しましょう。

会社を辞めるときに退職届を書いて、自主退職の形式をとって会社を退職した人は、一般的に自主退職扱いされて、失業保険に3ヶ月の待機がつきます。

しかし、以下の理由で自主退職に追い込まれた人は、離職票の退職理由の項目で「自主退職」にチェックがついていても、異議を唱えることができます。

・リストラ対象者にされて離職を促された経緯があった

・ハラスメントの被害を受けて辞職に追い込まれた

・会社の業務の都合で心身の病にかかって辞職に追い込まれた

・強制解雇と同等の経緯で自主退職に追い込まれた

・サービス残業が多すぎて身体を壊しそうになった

これらの理由は、「特定退職者」扱いされて待機の期間が7日に短縮されます。

ただし、そのためにはハローワークの職員に離職の経緯を訴えて、質問に答えたり、必要書類を求められたりすることもあります。

ハローワークの職員が、会社の担当者に電話で問い合わせをする事もあります。

しかし、金銭の要求をしない限り、会社と争いになる可能性は低く、あなたの主張が通る可能性が高いでしょう。

労基署の労働争議になったり、労基署の調査が入ったりして、会社の名誉に傷がつくことを恐れるからです。

ダメモトで訴えてみる可能性はあります。

(2)正真正銘の自主退職の時でも待機の短縮方法がある?

また、本当に自首退職の人は、待機期間に、職業訓練を受けると、その期間待機の縛りが外れて、職業訓練を受けている間、失業手当が貰えます。

これは、ハローワークが主催する職業訓練所で行われる職業訓練のみです。

派遣会社や転職エージェントが主催する職業訓練は含まれませんので気をつけましょう。

また、職業訓練には定員があって早い者勝ちです。

あなたが退職してすぐに就職訓練がタイミングよく始まるかどうかも不明です。

そのため、事前に住所管轄のハローワークに立ち寄ったり、ネットで調べたり、電話で問い合わせたりして、職業訓練の情報収集をして退職の時期を決めるという方法もあります。

 

まとめ

失業したら、次の就職を決める前に、まずは家族のことを考えて、行政手続きを行いましょう。

これをやっておかないと、次の就職が決まるまで、年金の未納期間になってしまいます。

もしも奥さんが3号被保険者だった場合は、奥さんも一緒に年金未納期間になってしまいます。

また、扶養家族も含めて自分も、いつ病気になるかわかりません。

会社を辞めた翌日から、厚生年金も健康保険も資格喪失になりますので、転職活動の前に役所の手続きをして下さいね。

ちなみに、健康保険の資格喪失証明書や離職証明書、給与関係を一括してアウトソーシングしている企業もあります。

だから、辞める前に健康保険資格証明書や離職票を急いでもらうようにお願いしておきましょう。

健康保険資格喪失証明書だけでも、アウトソーシング経由ではなく、直接自宅に送って貰えるよう、アウトソーシングの会社にお願いして貰うと、直送が可能な場合もあります。

必要な処理や手続きは、仕事を辞める前にやっておいた方が良いことがたくさんあります。

辞めてから気付いても後の祭りです。

後悔しないように、仕事を辞める前には、辞めた後やるべき事を箇条書きにして、辞めた後にスムーズに必要な手続きが進むように準備万端整えてから会社を去りましょう。

「知識は身を助く」ですよ。

作成者: kiriko

元社労士の主婦ライターです。 知識と経験を活かしてコラムを書き始めて10年になります。 いつも初心を忘れず、少しでも読者の皆様のお役に立てればと思いながら記事を書いています。 どうぞよろしくお願い申し上げます。