「サービス残業当たり前」にならないために身を守る秘策3つ

あなたの会社は、「サービス残業当たり前」の雰囲気があったりしませんか?

残業代はしっかりもらっていますか?

2014年日本労働組合総連合会の調査では、下記のグラフのようにサービス残業をしたことのない人はいないようです。

 

データ引用元:日本労働組合総連合会 労働時間に関する調査[PDF]

それどころか、役職が重くなるほどサービス残業は多くなっているようです。

そもそもサービス残業とは何なのか?

労働基準法的に合法なのか、違法なのか、あなたは知っていますか?

そこで今回は、サービス残業について正しい知識を身につけて、サービス残業から身を守る方法をご紹介しましょう。

 

1.サービス残業は労働基準法ではどうなっているの?

(1)サービス残業についての労働者の法的権利としては?

労働基準法上、賃金の発生しない仕事なんてありません。

労働契約書に記載されている労働時間以外の時間は、就業時間前でも、就業時間後でも残業は賃金が発生します。

ただし、15分単位だったり、30分単位だったり、残業時間申請の時間単位は就業規則によってさまざまです。

だから、労働基準法上では、就業の準備も後片付けも労働時間内に行うことができるのです。

これが、労働基準法上の労働者の権利です。

(2)経営者側の残業代の支払い方について認められている権利

しかし、労働基準法上では、残業代について、労働者の権利は明記されていますが経営者側の権利は明記されていません。

労働基準法は、労働者の権利を経営者側から守るための法律なのです。

だから、残業代の計算の仕方から始まって、残業の1日の上限(8時間)、週の上限(40時間)等、細かく定められています。

ただし、少しは経営者側にも多少は配慮されていて、繁忙期の仕事が成立するように、特別に労働基準法以上の残業が許される特例として、労使協定(36協定)を労働基準監督署に届けて許可を得ることが定められているくらいです。

労使協定でも、3ヶ月120時間、1年では360時間と、その上限が定められています。

だからといって、労働者の権利として、ダラダラとしなくても良い仕事を毎日されて、残業代を請求されてはたまりません。

そこで、就業規則によって、残業の付け方、残業の請求の仕方、残業代を請求できる残業時間の単位等、細かく就業規則に定め、経営者の権利を主張することができます。

就業規則を定める際は、労働者の過半数を代表する者の意見書を就業規則に添付し、労働基準監督署に提出することによって、労働基準法に違反していないかを厳しくチェックされます。

つまり、労働基準法に違反していない就業規則なら、労働者の意見を聞くだけで、賛成を得られなくても良いのです。

ただし、就業規則の変更の際には、労働基準法に違反していなくても、変更前の就業規則よりも、労働者が不利になる場合は、労働者の理解を得られない場合は、よほどの正当な理由がないと労働基準監督署の許可が下りません。

(3)世間的なサービス残業の認識

権利が主張できない社内の雰囲気もある

このように、労働基準法が労働者を手厚く守っていても、法律には抜け道があるものです。

海外では、権利の主張がはっきりとされる国も多いのですが、日本では自分の居場所を心地よいものにするために、「これ違法じゃない?」と思っても、会社の雰囲気でサービス残業が普通に行われています。

例えば、会社の雰囲気で、就業時間前の残業代を請求しにくいのが一般的です。

朝の朝礼が就業時間前に始まっても、それを労基署に届け出る人はいません。

また、労働契約書に定められている昼休みや労働基準法の8時間以上働いた後の15分休憩に仕事をしても、残業代に含まれません。

残業している意識がない場合も多い?

タイムカードを押してから、ちょっとした仕事を頼まれて、30分残業しても残業代を請求しません。

このちょっとした時間が積み重なって、サービス残業が積み重なっています。

そもそも、8時間越えの休憩時間30分に、本当に30分の休憩をしている人を滅多に見たことが無いのではありませんか?

そして、ほとんどの人が始業前15分~30分前には出勤しています。

15分未満の残業はサービス残業の会社がほとんどです。

ということは、就業前と終業後だけでも、30分以上はあります。

交通機関の関係上、1時間前には出社している人もいます。

会社に朝早く来て、多くの人は仕事の準備をしています。

これもサービス残業です。

日本人は、時間に遅れません。

そのために、朝の出勤時間のサービス残業が多いのかもしれません。

でも、朝早く来ても仕事を始業時間ギリギリまでする必要はないので、寝ていても良いのですが、周囲の雰囲気で何故か、メールチェックや仕事の準備をしてしまう習慣が日本人は普通にあるのです。

サービス残業は毎日だいたい1時間はやっている?

日本労連のアンケートによると、サービス残業の月平均時間は16.7時間です。

月平均の出勤日数を22日とすると、1日平均46分サービス残業ということになります。

課長クラス以上にならないと1時間を超えません。

非正規雇用の社員に関しては、25分。

派遣社員の場合、30分単位で残業代が請求される仕組みの会社が多いので、サービス残業の平均値が1日25分ということは、非正規雇用の社員の方が残業代がしっかり支払われているといえるでしょう。

このように、非正規雇用社員が極端にサービス残業が少ないので、平均時間を下げていますが、正社員の場合は、だいたい1時間といった感じです。

グズグズしていたら、30分なんてあっという間です。

制服で仕事をしている場合、朝は着替えのために始業30分前に来て、終業時間の後着替えていたら、会社の門を出るまで30分です。

制服を強要されている以上、労働基準法では、着替えも就業時間内で良いはずです。

でも、それを権利だと主張することを、「日本人の常識」では、主張する人はいないでしょう。

 

2.違法なサービス残業を認知し自分なりの対策をしよう

(1)よくある違法サービス残業

  • 就業時間前の朝礼
  • 持ち帰りの仕事
  • 就業時間前のお掃除当番
  • 就業時間後の全員出席の飲み会
  • 接待
  • 外出先の仕事先から定時に直帰した場合の通常よりも長い通勤時間
  • 平社員同等の権利しかない「名ばかり管理職」の裁量残業
  • 定時退社後の仕事の頼まれ事

サービス残業の一例を挙げてみましたが、このようなサービス残業が発生するのは、会社側のコンプライアンスの低さ、あるいは上司の労働基準法に関する無知が原因です。

(2)会社としてのコンプライアンスが低い場合

ブラック企業だと思ったら転職がお勧め

残念なことに、会社としてのコンプライアンスが低い場合は、労働者としての正当な権利を主張すると、会社に居辛くなります。

サービス残業が当たり前に行われている会社は、既に経営者が労働基準法違反であることを認知していながら、時代について行けずに、昔の丁稚時代の考え方で、教育をしているつもりで、パワハラ・セクハラも普通に行われる可能性もあります。

いわゆるブラック企業ですから、そういう会社は、労働基準法の抜け道や労基署の監査の抜け道を心得ていますので、権利を主張しても苦しい立場に追い込まれるだけで、何もよいことはありません。

自分の会社が「ブラック企業」だと思ったら転職をすることをお勧めします。

賃金未払い請求は裁判より労働審判や社労士会紛争解決センターへ!

「泣き寝入りは悔しい」と思う方は、退職してからも未払いの賃金請求はできます。

①在職中に証拠を整えておきましょう

ブラック企業の場合は、会社側は認知しながらサービス残業を強いていますので、

在職中に勤務時間をメモしていたり、会社を退社する時間の写真をラインで家族や友人のような信頼できる人に送ったりして、証拠を整えておきましょう。

②裁判は時間がかかりすぎる

裁判では民事裁判となるので、判決が下るまで何年もかかりますので、まずは労働審判をお勧めします。通常2~3回で審理が終了しますので、数ヶ月で紛争解決です。

あるいは、全国社労士連合会が紛争解決センターに相談してみるのもお勧めです。

ここまでが正論ですが、筆者の特定社労士としての個人的見解を申し上げます。

筆者は数年前まで現役特定社労士だったのですが、「残業等未払い賃金の請求を行う」ということは、戦う強い覚悟と意思が必要です。

③性格によっては過去を切り捨て楽しい未来にかける方法も

紛争はどんなに短い間に解決して満足いく結果を得たとしても、それまでの経過は決して簡単な道のりではなく、傷つくことも腹が立つこともあります。

そのようなことが、あなたの心の傷になることもあります。

新しい仕事に就けずに生活に困ってしまう場合は別ですが、転職が上手くいく可能性が高いのなら、新しい会社で楽しく充実した人生を送る方が明るい未来が待っているような気もします。

特定社労士が言うことではないのかもしれませんが、特定社労士をしていて、そんなふうに感じたこともありました。

 (3)上司だけが労働基準法を知らない人の場合

本社のコンプライアンス部門に相談して異動願いを出してみよう

会社はコンプライアンスがしっかりしているのに、あなたを査定する上司の残業の認識が労働基準法とズレている場合があります。

そのような場合は、本社の総務等にコンプライアンスに関する訴える場所(総務や人事等)があるはずなので、そのような場所に訴えたり、部署の異動願いを出したり、自分なりの対策を講じましょう。

もしあなたが我慢できるのなら、「この人の下に付いたのだから仕方ない」と一旦諦めてしまいましょう。

労働基準法の認識の薄い上司は、その上司の若い時代の働き方をあなたにさせているだけなのです。

時代の移り変わりについて行けていないオジサンだと思いましょう。

異動が叶うまで割り切って上司と上手に付き合う方法もある?

しかし、そういった時代のたたき上げのオジサンは、世の中にたくさんいます。

50代の人はほぼそうでしょう。

しかし、出世している賢いオジサンほど、「今は自分の若い頃と時代が違う」と時代の流れを読み、我慢しているだけなのです。

もしあなたが営業なら、あなたの上司の気持ちを理解できるようになったら、取引先の50代の決裁権を持つ担当者の心を鷲づかみにできるかもしれません。

また、営業でなくても、あなたの上司があなたの会社で業績を上げてエリートコースに乗っている人なら、それなりの仕事の手腕を持っているのですから、異動願いが叶うまでの間、上司の手腕を盗むつもりで、仕事に励んでみることもお勧めですよ。

割り切って難しい人にも上手にお付き合いできる器の大きな人間になれるチャンスかもしれません。

 

3.周囲に自分の仕事のスタンスをアピールしよう

(1)仕事ができないと自分に罪悪感を持つ必要はない

新入社員だったり転職したばかりで会社に慣れていなかったりしている人の場合、あるいは自分に自信がない人場合は、「自分の仕事のスピードが遅いのでは?」という罪悪感から、進んでサービス残業をしてしまう人もいます。

例えば、早く仕事を覚えたくて、急ぎの仕事でもないのに、朝早く来て資料を作ってみたり、遅くまで残業してしまうケースです。

まだ仕事に慣れていなくて一人前に仕事ができないからといって、周囲に気を遣って「お先に失礼します」と言えずにいるケースもあります。

しかし、そんな気遣いはいらないのです。

あなたの状況を周囲はちゃんと分っています。

転職者は「即戦力として期待している」と言われて入社したかもしれませんが、誰でも入社してすぐに一人前に仕事がこなせるとは思っていません。

周囲は、忙しくてあなたに十分な説明をしてあげる暇もなく、あなたに先に帰って欲しい場合もあるのです。

新米のうちは、仕事がないなら、できるだけ残業をしないで定時で帰ってしまいましょう。

いずれ一人前になったら嫌でも残業しないといけなくなるのですから。

ただし、就業時間は集中して、「報連相の徹底」と「同じ失敗を二度しない」、「分らないことは聞く」この3つを徹底するようにして下さいね。

これが最も早く一人前になるコツです。

(2)「残業しない人」アピールをしよう

周囲に「定時になったら即行帰る人」と認識してもらいましょう。

毎日、お昼休みや定時の5~10分前くらいになったら、デスクの上を片付けて席を立つ習慣をつけるのです。

あなたが後片付けを始めたら「もうそんな時間か」と周囲が認識するようになるくらいに徹底して行いましょう。

そうすれば、周囲があなたを「残業しない人」と認識して、定時間際に仕事の電話が来たり、16時過ぎて仕事を頼まれたりすることがなくなります。

その代わり、「時間内に残業せずとも仕事はきっちり!」を達成するような仕事の成果も上げる努力をして下さいね。

ただの怠け者に会社はお給料を払ってくれるほど優しくありません。

会社が求めるのは、「仕事の成果を上げる人」です。

だから、あなたが仕事の成果を上げる人である上、残業を全くしなくても許される人材として評価されるのです。

そのためには、あなたも如何に効率よく仕事をこなしていくか、努力が必要となります。

知識と情報があなたを「定時で帰る有能な人」にしてくれる

筆者が知る限り、仕事のできる人は、情報をたくさん持っている人です。

新聞・読書、NET等での情報収集も大切です。

情報をたくさん持っている人は、アイデアの紐もたくさん持っているようなものです。

少ない情報でも、点と点をつないで線にする事もできます。

小さな情報をヒントに、大きな事実に気付いたりもします。

知識と情報を巧みに操るために、自分の知識を常に磨く努力も必要でしょう。

知識は積み重ねると、その応用で知識を膨らませることもできるのです。

その知識が、あなたの作業効率を短縮してくれるので、残業しなくても仕事ができる人となれます。

 

まとめ

サービス残業は違法ですが、日本はアメリカのように「権利」を正々堂々と主張できるお国柄ではありません。

「つきあい」や「場の雰囲気」を大切にする国でもあります。

平成生まれのITに囲まれて育った20代の若者は、グローバル化して、はっきりと個を主張できる人も増え始めました。

しかし、それについて行けない古いオジサンもまだまだ会社にはたくさんいます。

そういったオジサン達から仕事術を盗むには、オジサン達とコミュニケーションが取れなければなりません。

仕事は、コミュニケーション力も重要で、コミュニケーション力の高さが仕事能力を一層加速させてくれます。

自分の知識や能力のために、時にオジサン達に合わせてサービス残業することがメリットを生むこともあります。

一方、自分の権利を主張するなら、権利を主張する能力を身につける必要があります。

何も学ばず、努力もせず、目上の人を思いやる優しさにかけた人が、もしも権利ばかり主張し続けたら、空っぽな自分が一番の頭でっかちな会社のお荷物人間ができあがってしまうこともあります。

だからといって、権利を主張できない周囲に流される人間は、自分を追い込むばかりで、人生何のメリットも得られないことが多いとも言えます。

サービス残業しない定時で帰れる人になるために、自己の知識と情報を一切曇らせることなく常に磨きをかけ、同時に法律を学び、自己を守る方法を取得しましょう。

仕事ができる人ほど、人脈が多く、知識も情報も趣味だって豊富なものです。

作成者: kiriko

元社労士の主婦ライターです。 知識と経験を活かしてコラムを書き始めて10年になります。 いつも初心を忘れず、少しでも読者の皆様のお役に立てればと思いながら記事を書いています。 どうぞよろしくお願い申し上げます。