[仕事のできない人]に対してイライラしたり怒ったりして、ストレスを貯め込んでいる人が、最近多いとよく聞きます。
どのような理由があっても、「他人のために自分がストレスを貯め込む」というのは、最も損なことです。
[仕事のできない人]のために、体調を壊したりしたら、まします頭にきてしまいますよね。
そんなことにならないように、今回は、あなたをイライラさせる[仕事のできない人]へのいくつかの対処方をご紹介しましょう。
1.[仕事のできない人]の特徴を探ってみる
(1)教えるときは「相手の常識に習って教える」ことを心がけよう
そもそも、その人は本当に[仕事のできない人]なのでしょうか?
もしかしたら、あなたの教え方にも次のような改善点があるのかもしれません。
例を出して解説しましょう。
例1)
「勉強ができる東大生が、必ずしも良い家庭教師になるとは限らない」という話を聞いたことがありませんか?
これは、「頭が良すぎる人は、頭が悪い人が躓いている場所を探り当てても、『そんな簡単な所で躓く理由がわからない』」というところに大きな問題があります。
例2)
例えば、病院に行って医師から「どんな風にどこが痛いのですか?」と聞かれたときに、風邪や頭痛といった一般的な症状なら、一般的によく使われている言葉で表現できます。
ところが、あなたが経験したことのない初めての苦痛だった場合、その痛みをどのように表現して良いのか分からない、といった気持ちになったことはありませんか?
その表現がイマイチで、医師に痛みの感じが上手く伝わらないこともあります。
例3)
2~3歳の言葉を覚えたばかりの幼児が、母親に何かを伝えたくて「幼児特有の擬態語」で表現しても、母親はそれが何を表現しているのか悩んでしまうこともあります。
しかし、しばらく子供の様子を見ていたら、母親は、それが何を意味している言葉なのか分かります。
これらの例から分かることは?
あなたと[仕事のできない人]のレベルが違うのだったら、あなたが相手の常識に下りている必要があります。
また、[仕事のできない人]を外見や年齢によって、あなたの常識で「○○なんだから、××できるはず」と判断してしまうから、その期待を裏切られたときに腹が立つのです。
もし、一緒に働くのが小学生だったら(そういうことはありませんが)、あなたは仕事の指示を出すとき、小学生ができるレベルのタスクを割り当てるでしょう。
また、小学生が分からないところを聞いてきたときも、小学生がわかる言葉で説明するでしょう。
小学生が仕事のミスをして失敗したからと言って、目くじら立てて怒ってしまうこともないでしょう。
「小学生でもできると思った自分が甘かった」と反省し、小学生のレベルに合わせて「どこが分からない?」と小学生目線で優しく質問し、小学生でも分かる言葉で、かみ砕いて優しく説明し、さらに説明した後に「わかったかな?」と確認するでしょう。
そして、幼児のお母さんのように、[仕事のできない人]の行動を観察して、その人がどこで躓いているのかを探ったり、分からない点や困っていることを質問して理解を促す方法を探してみましょう。
[仕事のできない人]にスキルアップを望むのなら、常識を合わせる(相手の立場や気持ちにより添ってみる)ことを心がけましょう。
(2)「相手の常識に合わせる」具体的方法
仕事が遅すぎる場合
まず、[仕事ができない人]が、仕事のスピードが遅すぎるなら、時間がかかる理由を探ってみましょう。
・このとき、“1人称会話”が基本です。
“2人称会話”だと「あなたは、どうしてこんなに仕事が遅いの?」となりますので、相手を責めている感じになって、相手の気持ちを引き出すことはできません。
“1人称会話”だと、次のような会話になります。
「私は、そんなに難しい仕事をお願いしたつもりはないのでだけど、どこかで困ってますか?」
こんなふうに質問系で聞くと、相手の答えを自然と待つ感じになるので、相手から「困っている点」や「躓いている点」を導きやすくなります。
聞いて見たら、「Excelの計算式を上手く使えなくて手計算をしていたから時間がかかってしまう」とか、表やグラフの作り方や、ソートといった基本操作ができなかった、なんてこともあります。
普段当たり前に会社でExcelを使用している人は、Excelの基本操作は分かっている前提で指示しますので、たくさんの誤解が生じていたというわけです。
[仕事のできない]人に、エクセルの基本操作を教えたら、[仕事のできない]人が[仕事ができる人]に早変わりかもしれません。
・仕事が遅いのは、何か原因があります。
仕事が原因ではなく、気が散ったり、遊んでいる時間が長い、他の人に雑事を押しつけられている等の、他の原因があるはずです。
本人の性格に原因があるなら、注意というかお願いしてみましょう。
「仕事中にlineは止めてくれますか?」とか「1つのことに集中してくれすか?」といった感じで言うのがお勧めです。
最近では、注意するとパワハラだと受け止める人もいるので、お願い系は安全です。
注意や叱責をするときに、何も声を荒げたり、感情を込めて怒鳴りつける必要はないのです。
怒っていることは、相手の目を見て、ゆっくり丁寧語で話せば、賢い人には伝わります。
この方法で伝わらない人は、言ってもダメなケースが多いのでその場合は、相手をするだけ時間の無駄です。
また、他人に原因がある場合は、他人に事情を話して、[仕事ができない人]に雑事等を任せるのを控えてもらいましょう。
何度も同じミスをする人の場合
何度も同じミスをする人には、その原因があるはずです。
[仕事ができない人]と一緒に、どうして同じミスをするのか話し合ってみましょう。
このときも、イライラしていると、相手を責めてしまいがちなので、“2人称会話”ではなく“1人称会話”で話すように心がけましょう。
先に説明したように、もしかしたら、あなたの指示の仕方が悪いのかもしれません。
あなたが[仕事のできる人]なら、[仕事のできる人]の常識のレベルを[仕事のできない人]のレベルに下げるために、コミュニケーションが必要です。
ランチに行く等して、[仕事のできない人]の苦悩を聞いてあげましょう。
その結果、お互いのより良い人間関係が築ければ、気軽な会話がでりるようになって、問題解決がよりスムーズになります。
・いくら“1人称会話”でも、デスクで聞くのは控えた方が良いのかもしれません。
もし、[仕事のできない人]が、恥ずかしくてあなたに聞けずにいたのなら、デスクで聞いたのでは、相手に恥をかかせるようなものなので、問題解決に繋がらないかもしれません。
困っている点を解決できれば、[仕事のできない人]が、あなたの強力なアシスタントになってくれる可能性が広がります。
性格による問題がある
時間にルーズ、頼まれたことを忘れる、報連相をしない、できないことを隠して自分で何とかしようとする……etc.
これらの問題は、チームの仕事に大きな支障をきたしますが、性格はなかなか直らないものです。
注意して直るものなら1度で直っているでしょう。
何度も同じ事をするようなら、病気だと思って自分で注意するようにしましょう。
・対応策
- 時間にルーズ → 期限を前倒しにして指示を出し、中間報告を自分から相手にお願いする。
- 頼まれたことを忘れる → 自分の仕事が整理できていないので、忘れないように、時々声をかける。
- できないことを隠して自分で何とかしようとする → 困ったときに助けを求め安い環境を作ってあげる、時々声をかけて、相手の仕事の出来具合を確認する。
性格による問題は、コミュニケーションを良くして、人間関係を構築すれば、会話によって問題解決を図る事も可能です。
2.イライラは愚痴をこぼすだけでも収まることもある
(1)口の堅い同僚に悩みとして相談してみる
“1人称会話”でも、他人に注意や指導をするのはストレスになります。
そういたイライラは、口の堅い同僚に愚痴をこぼす事も必要です。
話して気持ちを共有するとイライラも収まります。
でも、同僚が自分と同じ悩みを抱えていなくて、同僚には[仕事ができる人]に写ってる事もあります。
あるいは「[仕事のできない人]ではあるけれども、性格が良いので、少しずつ仕事ができるようになっている」といったふうに、印象が全く違う場合もあります。
そのような時は、あなたと[仕事ができない人]の人間関係に問題があって、あなたが悪く受け取り過ぎなのかもしれません。
(2)人間の感情は相手にも通じるもの?
人間の感情とは、無意識のうちに相手へ伝わってしまうものです。
あなたのイライラした様子が、[仕事ができない人]に無言のプレッシャーを与え、萎縮させ、あなたが怖くて質問もできない状態でいるのかもしれません。
そういう場合は、[仕事のできない人]にイライラする前に、相手の良いところを探す努力をしてみましょう。
相手の良いところを見つけられたら、自分の反省点にも気づきます。
反省して申し訳ない気持ちになると、イライラも解消します。
より良い人間関係望むなら、相手を好きになることから始めてみましょう。
3.イライラの原因に改善を求めるのではなく自分が変わる事も必要
(1)言っても直らない人は病気と諦める
悪気なく「言っても直らない人」もいます。
20代なら「辛抱強く指導する」という方法もありますし、相手の将来のために指導も必要です。
相手のレベルまで下りていって、言葉をかみ砕いて根気よく指導していくと、有能になる可能性も芽を出し始めるでしょう。
そうすることで、[仕事のできない]部下も、将来有能なあなたの右腕になるかもしれません。
でも、既に30代後半の[仕事のできない]の場合は、社会人経験も長く、自分の仕事の能力を把握できていないケースが多いから厄介です。
そういう人は、自分が如何に迷惑をかけているのかを自覚していません。
「言っても直らない人」には、無駄な時間を費やさないように、自分で自分を防御しましょう。
毎回同じ事をするのですから、その相手の迷惑行動も、あなたのスケジュールに組み込んでおきましょう。
初めから想定の範囲内なら、イライラすることは少なくなります。
また、[仕事ができない人]だとしても、会社に首になっていないということは、迷惑社員であっても、会社の損失に繋がる大きな失態をしていないと考えましょう。
上手に使えば、何かしらの役に立つはずです。
そのためには、[仕事のできない人]の役立つ点や長所を探してみましょう。
仕事はできなくても、お茶を入れるのが上手、資料整理が得意、癒しになる、雑用を嫌な顔ひとつせずにやってくれる……etc.探せば何かあるはずです。
(2)中途採用の場合は諦める前に相手の気持ちに寄り添ってみる
中途採用の人は能力を発揮するまでの助走期間が必要です
中途採用の新入社員なら、会社が能力を見極めて、即戦力になる人を採用しているのですから、会社に慣れていないことで能力が発揮できないのかもしれません。
能力があるなら、会社の方針やルール、専用ソフトの使い方等をわかりやすく教えれば、本来の能力を発揮してくれるはずです。
ただし、即戦力になり得るはずの年齢の人は、自分の仕事の仕方や、今までに培った仕事へのプライドがあるはずですから“1人称会話”で相手の気持ちに気遣いながら、デリケートな表現で指示を出しましょう。
一旦、相手のプライドを傷つけてしまうと、モチベーションの低下になりますので、言い方に気をつける必要があります。
ただし、三ヶ月経っても全く改善が見られないときは、諦めましょう。
[仕事のできない人]の場合は将来のための訓練だと思いましょう
中途採用で入社した人が、即戦力にならない期待外れの[仕事のできない人]だった場合も、毛嫌いせずに、[仕事のできない人]の長所を探して、[仕事のできない人]の仕事力を把握することを試みましょう。
過剰な期待はしないように楽しんでみるのはいかがでしょう?
人間には、探せば必ず良いところがあるはずです。
また、管理職になると部下の指導力も実力のひとつです。
仕事のできない部下でも上手に使える仕事力・コミュニケーション力が、必ず必要になってきます。
[仕事のできない人]を如何に上手く使い、如何にスキルアップさせるか……etc.願ってもない練習台だと思いましょう。
[仕事のできない人]が、もしも年上なら、相手のプライドを傷つけずに、自分が思ったように動いてもらう練習になります。
早くして出世したい人には、将来必ず年上の部下ができる可能性が高く、先輩を追い越して出世するのですから、嫉妬や妬みで、なかなか難しい立場になることが予想されます。
昔、先輩だった人に、上司として指示し、命令しなければならない地位となった時に、相手のプライドを傷つけずに、人間関係を維持しながら、上手にコミュニケーションをとるための訓練だと思うのが得策です。
ただでは起きない、”七転び八起き”の精神で歩んでいくよう心がけると、イライラやストレスが少なくなって、しかも、自分の仕事力アップに繋がるから一石二鳥です。
ちなみに、自分の仕事のことしか見えない人は、出世の道を自分で狭くしているようなものです。
“1人称会話”でお願い系の指示を出し、上手に言葉を選んで口にすることをどんなときも忘れずに心がけましょう。
そういう習慣を身につけることは、将来必ず役に立ちます。
「情けは人のためならず」です
人を切り捨てるのではなく、人の長所を探す訓練は、時として自分の身を助けることにもなります。
「情けは人のためならず」です。
これは、「情けをかけたら、巡り巡って将来の自分を助けてくれる」ということです。
他人への情けは、自分のためにすると言うことなのです。
他人は、どんなことで恨み、どんなことで恩を感じて感謝しているかわからないものです。
だから、どんなときも、相手の気持ちを考えてみましょう。
できることとできないことがありますが、たとえ[仕事ができない人]で迷惑な存在だったとしても、切り捨てるのではなく、上手に付き合いましょう。
「釣りバカ日誌」の浜ちゃんみたいに、一見[仕事ができない人]でも、ときとしてすごい役に立つこともあるかもしれません。
まとめ
いかがでしたか?
イライラ感情は、視野を狭くするし、体調も壊すし、良いこと無しです。
[仕事のできない人]にイライラするよりも、上手に人間関係を築きましょう。
「自分の仕事の邪魔になる人間は迷惑だ」と切り捨てるのは簡単ですが、いつか何らかの形でそのツケは自分に返ってきます。
人間関係を築いておけば、会話のコミュニケーションによって、[仕事のできない人]の隠れた能力を導くこともあります。
それは、あなたの評価に繋がります。
「あなたのために頑張りたい」と相手に思わせる人力(人としての魅力)は、「相手の長所を最大限に活かした何か」の源動力になるはずです。
この原動力を導き出せるのが、人の上に立つカリスマ性になるのです。
そう思ったら、[仕事のできない人]にも、イライラするのではなく、優しくなれるのではないでしょうか?