【敷金返還】賃貸を退去するとき、現状回復はどこまでやるべき?
賃貸物件を利用している以上、絶対に避けては通ることができない問題が「退去時の費用負担」です。
基本的に賃貸物件を契約する際には「原状回復」という言葉が使われますが、この言葉通りの状況が出来上がっていれば何の問題もありません。
しかし、現実的には言葉自体が持っている範囲を逸脱した請求が行われることも十分にあり得るため、問題が大きくなってしまいやすい部分です。
重要なことは、「契約の段階で退去時のことを確認すること」ですが、実際にそういったことをしている人は少数派です。
多くの人が「借りる」ということにだけ頓着してしまっていて、細かな契約内容を把握していないこともあり得るほどです。
しかし、実際には細かい契約内容を把握してこそ安心して賃貸契約を結ぶことができるので、必ず確認するべきポイントを把握しておくことが大切です。
そこで今回は、退去時に良くあるトラブル「原状回復」について、どこまでやるべきなのかを詳しく解説していきます。
引っ越しの際、ぜひ参考にしてくださいね!
Contents
経年劣化の責任を負う必要ナシ!あなたが弁償すべき範囲とは?
経年劣化の定義とは?
原状回復を考えていく上で最も重要となるポイントが、「経年劣化」の認識です。
これは、「基本的な使用環境において避けることができない故障や破損」を指して用いる表現ですが、具体的な定義はあまり明確ではありません。
もちろん、専門的な解釈の場においては明確な基準が採用されているのですが、素人が簡単に把握できるほど甘くはないということです。
「普通に使っていた」状態では弁済する必要のないもの
とはいえ、「普通に使っていた」という環境であれば、基本的には弁済する必要はありません。
たとえば、以下のような状況。
- テレビの後ろの壁が黒く変色してしまった
- ベッドを置いていた床に足の跡(へこみ)ができてしまった
- お風呂のパッキンがカビてしまった
これらは、基本的に賃貸人負担で補修を行うことになるのです。
ただし!例外もあり
ただし、「お風呂のカビ」などは非常に扱いが難しく、「通常考えられる程度の清掃を行っていたのに発生してしまったカビ」は貸借人負担となりませんが、著しく清掃を怠ったことが原因でカビが発生している場合には賃借人の負担で補修をする必要があります。
誰もが「当たり前」と思える範囲で使用していて、それでもなお故障や破損してしまう程度の補修であれば賃借人が負担する必要はないと考えて問題ありませんが、それでもなお賃借人負担となる可能性がある状況もあります。
(例外その1)契約書類に明記されている場合
たとえば、「契約書類として原状回復の範囲が明記されている場合」です。
本来、タバコによる壁紙の変色は原状回復の対象にならないものとして取り扱われていましたが、現在では「賃借人負担で補修をする」という考え方が一般的です。
(例外その2)画びょうを刺した壁の穴
また、「壁に画びょうを刺す」という場合の取り扱いに関しても、不動産業者や大家の考え方で大きな違いがあります。
定義として言えば、日常生活で必要な画びょうの穴は賃貸人負担ですが、契約書類上で賃借人負担と明記されている場合もあるのです。
掃除って、どこまで必要なの?
そもそも掃除は必ず行なうもの?
賃貸借契約を解消する際、基本的には「部屋をキレイに掃除して返却する」ことになります。
ただ、これは必ず行わなければいけないことというわけではなく、中には一切掃除をすることなく返却する人もいます。
いずれの選択が正しいと言うことはありませんが、「コスト削減」「余計なリスクを回避する」という観点から考えると、「できるだけしっかりと清掃した方が賢明」です。
賃貸借契約の解消時に清掃を行うのは、いわば日本人としての美徳です。
本来、契約上それが必須ではない状況であっても、「貸してもらった」という恩義に報いるために最大限の行動を行うのが日本人独特の気質なのです。
これは、欧米文化で育った人からすれば意味が理解できないことですが、ある意味では世界的に「日本人らしい」と言われるゆえんでもあります。
掃除をしてから返却する際のメリットとは?
ただ、「余計なリスクとコストを軽減する」という観点から言えば、できる限りしっかりと清掃をしたうえで返却した方が無難です。
たとえば、特に何もしない状態で「原状回復」の話になったとき、「汚れている」という状況が原因で余計な費用を負担せざるを得なくなる可能性があります。
これは、退去時に確認をする担当者に対して「印象を良くする」という効果が重要なポイントで、少しでもポジティブな印象を持たせるように努力することでリスクを解消できます。
たとえば、誰の目にも明らかに「汚い」と感じる部屋を評価する場合と、誰の目にも明らかに「キレイ」と感じる部屋を評価する場合では結果に違いが出る可能性が高いです。
もちろん、本来はそういった不明確な根拠で結果が左右されてしまってはいけないのですが、「印象」は簡単に操作できてしまうので致し方ありません。
特に何もせずに確認を受けた場合には原状回復の対象となる部分が多く見つかってしまう可能性があっても、しっかりとケアしておくことでそれがなくなる可能性があるのです。
結論
これらのことから、なかなか手の届かないような場所までキッチリ掃除をする必要はありません。
しかし、日常的に掃除をするような最低限の箇所だけは、しっかり掃除をしてから返却すると良いでしょう。
その他の退去時に注意すべきこと
公共料金の手続きは忘れずに
退去時に注意するべきことは、「必要な手続きをしっかりと完了させる」ということです。
たとえば、「ガス、水道、電気」の契約は入居者個人が行うため、退去時にはしっかりと解約手続きを行う必要があります。
特に、ガスの解約時は「立会い」が必須となる場合が多く、その場に契約者本人がいないだけで余計なコストが発生してしまう可能性もあります。
退去時は、退去日時を伝えることで解約日を決定しますが、連絡が遅れると当日に解約手続きを行えなくなってしまう可能性もあります。
水道や電気など、特に立ち合いでの手続きが必要ないものに関しては何の問題もありませんが、立ち合いの必要性があるものに関してはしっかりと把握して早めに対処しておいた方が賢明です。
意外と忘れがちなのが合鍵の扱い
そのほかには、「合鍵」の扱いにも注意が必要です。
基本的に賃貸物件を契約する場合には「鍵の本数」が指定されます。
契約者に渡される鍵の本数と大家(管理会社)が管理している鍵の本数を合わせているため、これが知らぬ間に変わってしまうとトラブルの元になります。
スペアキーは無断で作成しないこと
ただ、スペアキーを作成すること自体が問題ではなく、無断で作成することが問題になります。
要は、何らかの目的があってスペアキーを作成する必要があることを大家(管理会社)に伝えて了承を得ておけば何の問題もありません。
多くは退去時に鍵を交換しますが、物件によってはそれがないので「未確認のカギがある状態」は非常に敬遠されます。
細かい部分を含め、「できる限り被るリスクを少なく抑える努力」が重要です。
鍵の問題然り、水光熱関連の契約然りですが、何よりもまず「管理会社と揉めないこと」が重要です。
多くは取り立てて問題にならずに済みますが、不動産業者によっては「不必要なコストを吹っ掛けられてしまう」といったリスクが生じる可能性もあるので、注意しましょう。
まとめ
賃貸借契約において、「原状回復」の扱いは非常に多くの問題が発生するポイントです。
以前、現在ほど情報が共有されていない場合には、不動産業者の独り舞台だったこともあります。
素人相手に専門用語満載の説明で納得させてしまうようなこともありましたが、現在はそういうことは大分少なくなっています。
しかし、完全になくなっているわけではないので、自分自身で不必要なリスクを回避する努力をすることも必要です。
その手段として効果的なのは、「知識を身に付けること」ですが、それはけっして簡単ではないので「第三者に立ち合いを依頼する」という方法が非常に効果的です。
知人や友人に専門知識を持っている人がいれば良いのですが、そうでない場合は「消費生活センター」「弁護士」「別の不動産業者」などに協力を依頼し、手続きの場に立ち会ってもらうと安心できます。
ただ、手段によってはコストが発生する可能性があるので、その点も踏まえて手段を厳選することが大切です。